帰ってきたゲーム・オブ・スローンズ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』

HBOで最もヒットした作品「ゲーム・オブ・スローンズ」の放送終了から5年が経ちました。2011年にHBOで初放送されたゲーム・オブ・スローンズは、多様な立体的なキャラクターと、先の見えない陰謀と裏切りで人気を博しました。2019年に放送されたこのシリーズの最終話は、1,360万世帯が視聴し、HBO史上最高のヒット作となりました。

しかし、このシリーズの後期は批評的には惨敗でした。2011年に放送開始した当時、制作陣には映像化する原作小説が5冊もありました。原作のジョージ・R・R・マーティンは、TVシリーズが第5部を映像化する前に小説を完結できると思っていました。しかし、第5部に当たるシーズン5が2015年に放送されるまで、第6部は出版されませんでした。第6部は、シーズン1の初放送から13年経った今でも出版されていません。

結局、ジョージ・R・R・マーティンは、シリーズの制作者に自分が考えていた結末を伝えました。そして、必要であればTVシリーズの脚本も書いてくれると言いました。マーティンの考えでは、このシリーズの結末を正しく説明するには、10シーズン必要でした。長年TVシリーズの脚本家として活躍してきたジョージ・R・R・マーティンにとって、小説の完結よりも脚本の完成の方が早かったのかもしれません。一方、制作者たちは、この大規模なシリーズを10年間続けるのは負担が大きかったようです。彼らはシーズン8で物語を締めくくると言いました。

こうして、原作のないゲーム・オブ・スローンズがシーズン7から始まりました。ジョージ・R・R・マーティンは、もうこのTVシリーズには関与しないと宣言しました。制作者たちは、ジョージ・R・R・マーティンが伝えた結末に、すべての物語と筋書きを当てはめました。複数のシーズンにわたって変化するはずだった登場人物の性格は、わずか数分で突然変わります。華麗な弁舌で人気を集めたティリオン・ラニスター（ピーター・ディンクレイジ）は、意味のない言葉を呟くだけになり、奴隷の解放者だったデナーリスは、瞬く間に虐殺者に変わりました。

ゲーム・オブ・スローンズの衝撃的な結末の後、HBOの経営陣は悩んでいます。ゲーム・オブ・スローンズは大ヒットしただけに、後期の出来がいかに不十分だったかを人々は見てきたからです。HBOは、ジョージ・R・R・マーティンに、ゲーム・オブ・スローンズのスピンオフシリーズにできるような小説を依頼します。そして、その小説が完結した物語であることも要求します。

そこで、ジョージ・R・R・マーティンは「炎と血」というタイトルの小説を書きます。「炎と血」は小説ですが、歴史書のようなスタイルで書かれています。この本は、ゲーム・オブ・スローンズの世界の学者が過去に起こった出来事を題材に書いた歴史書という設定になっています。（ジョージ・R・R・マーティンが一つ一つ小説で書けば時間がかかるでしょうが、このように歴史書のコンセプトで概要を書くことは早かったようです。）そのため、この偽の歴史書を基にした新しいHBOシリーズのタイトルは「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」です。

ネタバレ注意！

ハウス・オブ・ザ・ドラゴンは、ゲーム・オブ・スローンズから170年前を舞台にしています。ゲーム・オブ・スローンズで既に没落したターガリエン（Targaryen）王朝は、この時代、最盛期を迎えています。王族たちはそれぞれドラゴンを1匹ずつ所有しており、ドラゴンに乗ったターガリエン家に対して、誰もが敢えて反旗を翻すことはありません。ターガリエン家が二つに分かれて内戦を始めるまでは。

「ゲーム・オブ・スローンズ」でエミリア・クラークが演じたデナーリス・ターガリエンの直系祖先であるラエニラ（Rhaenyra）王女は、父であるヴィセーリスによって正式に後継者に指名されました。しかし、父と若い新しい王妃であるアリセント（Alicent）との間に、遅れて生まれた弟が誕生します。その瞬間から、ラエニラは自分の立場が危うくなっていることを悟ります。

彼女の不吉な予感は、父であり国王であるヴィセーリスが亡くなると現実のものとなります。アリセント王妃は、自分が産んだ息子であるエイゴン（Aegon）を鉄の玉座に就かせ、彼が正当な新しい国王だと宣言します。ラエニラは王座を取り戻すため、ターガリエン家の古巣であるドラゴンストーンで戴冠式を行い、自分が真の王国の支配者であると宣言します。

エイゴンとラエニラは、それぞれ王国全土で支持者を募ります。前作の主人公のようなスターク家はラエニラに忠誠を誓い、ラニスター家はエイゴンを支持します。どちらもドラゴンを持つ王族同士、内戦だけは避けたいと思っています。しかし、予期せぬ裏切りと陰謀は、170年前でも避けられませんでした。誰も予想していなかった恐ろしい死と共に、再びウェスタロスで「ゲーム・オブ・スローンズ」が始まり、最初のシーズンが幕を閉じます。

2022年にHBO Maxで公開されたこのシリーズは、2,000万人以上が視聴し、ゲーム・オブ・スローンズに匹敵するヒットを記録しました。ゲーム・オブ・スローンズの最終シーズンに失望した視聴者を、再びこの世界に呼び戻すことに成功したと評価されています。「ゲーム・オブ・スローンズ」は原作小説が完結しておらず、後期の出来が急激に低下した一方、このシリーズは既に結末が決まっているため、最後に失望する心配が少ないという点もメリットとして挙げられています。

ゲーム・オブ・スローンズを面白く視聴したなら、これ以上魅力的なプレクエルはないでしょう。ミリー・アルコックが演じるラエニラ王女の幼少時代は、エミリアのデナーリスと妙に似ており、話題になっています。シリーズの象徴である鉄の玉座も、より壮大な姿で再び視聴者の前に登場します。特に、「ゲーム・オブ・スローンズ」で回収されなかった伏線「氷と炎の歌」がこのシリーズに再び登場しました。果たして今回は、「氷と炎の歌」が何か、視聴者は答えを得られるのでしょうか？「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の第2シーズンは2024年夏に公開されます。